漢字の練習というと、同じ字を何度も書いて覚える方法を思い浮かべる方が多いと思います。もちろん書く練習は欠かせませんが、学年が上がって漢字の数が増えるほど、形の暗記だけでは追いつかなくなります。そこで役に立つのが漢字の成り立ちです。漢字がどのようにできたかを知ると、一つひとつの字が、意味のある部品の組み立てとして見えてきます。この記事では、成り立ちの4つの種類と見分け方、そして成り立ちを漢字の暗記に生かす方法をまとめます。
漢字の成り立ちは4つ
小学校の国語では、漢字のでき方を次の4つに分けて学びます。象形文字は、ものの形をかたどった字です。「山」は三つの峰、「川」は流れる水、「日」は太陽、「目」は目の形。漢字の出発点になった字です。
指事文字は、形で表しにくいことを、点や線などの印で示した字です。「上」「下」は、基準の線の上や下に印をつけて位置を表しています。「本」は木の根もとに、「末」は木の先に印をつけた字です。
会意文字は、二つ以上の字を組み合わせて、新しい意味を表した字です。「日」と「月」で「明」、「人」と「木」で「休」(人が木のそばで休む)、「田」と「力」で「男」。部品の意味をつなげると、字の意味になります。
形声文字は、意味を表す部分と、音を表す部分を組み合わせた字です。「晴」は、意味を表す「日」と、音(セイ)を表す「青」でできています。漢字の大部分、8〜9割ほどが形声文字だといわれます。
見分け方の手順
成り立ちの問題でつまずく子は、字をぱっと見て感覚で答えています。見分けには手順があります。まず、その字が部品に分けられるかどうかを考えます。分けられない字なら象形か指事。絵のように形を写した字なら象形、点や線の印で示した字なら指事です。
分けられる字なら、会意か形声です。ここで、分けた部品を音読みで読んでみます。部品の音読みが、字全体の音読みと同じか近ければ形声です。「清(セイ)」は「氵」と「青(セイ)」に分かれ、音が同じなので形声。「明(メイ)」は「日(ニチ)」と「月(ゲツ)」で、どちらも字の音とはちがうので会意です。この手順を一度教えておくと、初めて見る字でも筋道を立てて考えられるようになります。
形声文字を知ると漢字が覚えやすくなる
成り立ちの学習が漢字の暗記に役立つのは、特に形声文字です。形声文字は、意味の部分と音の部分の組み合わせなので、同じ音の部分をもつ字をまとめて覚えることができます。「青」を音の部分にもつ字には、晴・清・精・静などがあり、どれも音読みに「セイ」をもちます。「反」なら板・飯・坂・版で「ハン」。「官」なら館・管で「カン」。
意味の部分は、多くの場合、部首と重なります。「氵(さんずい)」は水に関係があり、河・洋・洗・清。「飠(しょくへん)」は食べ物に関係があり、飯・館。部首の意味と音の部分がわかれば、「この字は水に関係があって、音はセイだろう」と、初めて見る字でも読みや意味を推測できます。
書き取りでも効果があります。「せいけつ」の「せい」を書くとき、「水できれいにする意味だから、さんずいに青」と考えられれば、「晴」や「精」と書きまちがえることが減ります。同音の字の書き分けは、高学年から中学にかけての大きなつまずきどころなので、成り立ちの考え方は長く役に立ちます。
家庭での練習ステップ
ステップ1:象形文字を絵と結びつける。まずは、山・川・日・月・木・目・口などの象形文字を、もとの形を想像しながら確認します。紙に「この字はどんな形からできたと思う?」と絵を描いてみるのも楽しい練習です。
ステップ2:会意文字を文にする。会意文字は、部品の意味をつなげて文にすると覚えやすくなります。「人が木のそばで休む」「日と月で明るい」「山の上り下りの境目が峠」。子ども自身に文を作らせると、記憶に残ります。
ステップ3:形声文字を音の部分でまとめる。教科書の新出漢字が出てきたら、「この字の音の部分は?」と聞いてみてください。同じ音の部分をもつ、すでに習った字を一緒に探すと、知っている字とのつながりができます。
ステップ4:4種類を見分ける練習をする。最後に、象形・指事・会意・形声の4つを見分ける問題で確認します。まちがえた字は、部品に分けて、それぞれの読みと意味を書きこむと、見分けの手順が定着します。
部首・音読みの学習とつなげる
漢字の成り立ちは、それだけで完結した単元ではありません。部首の学習、音読み・訓読みの学習、熟語の学習とつながっています。形声文字の「意味の部分」の多くは部首にあたり、「音の部分」は音読みを手がかりにしています。成り立ちを学んだあとに部首を復習すると、「さんずいは水、きへんは木、ごんべんは言葉」という部首の意味が、単なる暗記ではなく、漢字の組み立てのしくみとして理解できます。
また、音読み・訓読みの区別があやふやな子は、形声文字の「音の部分」を見つけることができません。成り立ちの問題でつまずいているときは、音読み・訓読みの復習から始めると、近道になることがあります。逆に、成り立ちの考え方を知ると、「この字の音読みは、音の部分と同じだろう」と推測できるので、音読みを覚える負担も軽くなります。
中学に進むと、学ぶ漢字はさらに増え、抽象的な意味の字が多くなります。小学校のうちに「漢字は部品の組み立て」という見方を身につけておくと、新しい字に出会ったときに、自分で意味や読みを考える力になります。辞書で漢字を調べるときに、成り立ちの欄にも目を向ける習慣をつけるのもおすすめです。漢字辞典には、多くの字について成り立ちの説明がのっています。調べた字の成り立ちを家族に説明してもらうと、子どもが先生役になれるので、楽しく続けられます。
低学年のうちからできること
成り立ちを本格的に学ぶのは中学年以降ですが、低学年のうちからできることもあります。1年生で習う山・川・日・月・木・目・口・人などは、ほとんどが象形文字です。新しい字を習ったときに、「この字は何の形に見える?」と問いかけるだけで、子どもは字を絵として楽しみながら覚えます。2年生以降、会意文字や形声文字が増えてきたら、「この字はどんな部品でできている?」と問いかけを変えていきます。学年に合わせて問いかけを少しずつ変えるだけで、成り立ちの考え方が自然に身につき、高学年で単元として学ぶときの理解も深まります。漢字への興味は、書き取りの練習を続ける力にもなります。
よくある質問
Q. 成り立ちの分け方が、本によってちがうことがあるのはなぜですか。
漢字の成り立ちには研究によって説が分かれる字があり、会意と形声の両方の性質をもつ字(会意形声)もあります。学校のテストでは教科書に出てきた分け方が基準になるので、まずは教科書の例を確実に覚えてください。
Q. 成り立ちを覚えても、書き取りの点数が上がりません。
成り立ちは、書く練習の代わりではなく、書く練習を楽にする道具です。新しい字を練習するときに、まず部品に分けて意味と音を確かめ、それから書く。この順番を続けると、形がまとまりとして記憶に残り、少ない回数で書けるようになっていきます。
まとめ:漢字を「組み立て」で見る
漢字の成り立ちを学ぶと、漢字は意味のない線の集まりではなく、意味と音の部品を組み立てたものだとわかります。特に形声文字の考え方は、同じ音の字の書き分けや、初めて見る字の読みの推測に役立ちます。まずは今日の漢字練習で、一つの字を部品に分け、「意味の部分はどれ?」と聞いてみてください。
4つの成り立ちは漢字の成り立ちのまとめ表で確認し、成り立ちの種類と組み立て(会意・形声)で練習を。意味の部分は部首プリント、音の部分は音読み・訓読みプリントで深められます。