中学1年生の国語で古文が始まると、多くの子が最初に戸惑うのが「歴史的仮名遣い」です。「いふ」「をかし」「やうやう」。見慣れない文字の並びに、「何て読むの?」と手が止まってしまいます。しかし、歴史的仮名遣いは、古文の中ではいちばん短期間で得点にできる単元です。きまりの数が少なく、覚えたきまりを当てはめれば必ず答えが出るからです。この記事では、つまずく理由と、家庭でできる練習の順序をまとめます。
歴史的仮名遣いとは何か
歴史的仮名遣いは、平安時代ごろの発音をもとにした昔のかなの書き方です。言葉の発音は時代とともに変わりましたが、書き方は長い間そのまま使われてきました。そのため、書いてある文字と、実際に読む音がずれています。「いふ」と書いて「いう」と読む、「けふ」と書いて「きょう」と読む、という具合です。今の私たちが使っている書き方は「現代仮名遣い」といい、昭和21年の「現代かなづかい」をもとに、昭和61年に定められたものです。
学校のテストでは、「次の語を現代仮名遣いに直し、すべてひらがなで書きなさい」という形で出題されます。定期テストではほぼ毎回、高校入試の古文でも、最初の小問として出ることが多い定番の問題です。配点は小さくても、確実に取れる問題を落とさないことが、古文全体の得点を支えます。
覚えるきまりは6つだけ
中学で必要なきまりは、大きく次の6つです。
①語頭以外の「は・ひ・ふ・へ・ほ」は「わ・い・う・え・お」。いふ→いう、あはれ→あわれ、かほ→かお、こひ→こい、うへ→うえ。出題数がいちばん多いきまりです。
②「ゐ・ゑ・を」は「い・え・お」。ゐなか→いなか、こゑ→こえ、をかし→おかし。
③「ぢ・づ」は「じ・ず」。みづ→みず、はぢ→はじ、よろづ→よろず。
④「あう・いう・えう」の音は「おう・ゆう・よう」。やうやう→ようよう、いうげん→ゆうげん、うつくしう→うつくしゅう。
⑤「む」は「ん」。なむ→なん、いはむや→いわんや。
⑥「くわ・ぐわ」は「か・が」。くわし(菓子)→かし、ぐわん(願)→がん。
このうち、①と④で問題の大部分をしめます。まずは①を確実にし、次に④ののばす音に進むと、効率よく得点が上がります。
つまずく理由は「文字で考えてしまう」こと
歴史的仮名遣いでつまずく子の多くは、文字を一つずつ置きかえようとしています。①のハ行のきまりは文字の置きかえで解けますが、④ののばす音は文字だけを見ても答えが出ません。「やう」を「やう」のまま書いたり、「よお」と書いたりしてしまうのはこのためです。
のばす音は、ローマ字に直して考えるのがいちばんの近道です。「やう」はyau。auはō(オー)の音になるので、yō=「よう」。「けふ」は、まず①のきまりで「ふ」を「う」にして「けう」、ローマ字でkeu。euはyō(ヨー)の音になるので、kyō=「きょう」。このように、二つのきまりを一段ずつ使う語もあります。一度に答えを出そうとせず、順番に直す手順を見せてあげてください。
もう一つのつまずきは、①のきまりを語頭にまで当てはめてしまうことです。「はな(花)」「ふね(舟)」「ひと(人)」は、語のはじめのハ行なので直しません。「ふね」を「うね」と書いた答案は、きまりを覚えてはいるけれど、使う場所を確かめていない状態です。語のはじめの文字に指を置き、「ここは直さない」と確認してから読む習慣をつけましょう。
家庭での練習ステップ
ステップ1:6つのきまりを例と一緒に音読する。きまりの文だけを覚えても、使える力にはなりません。「いふ→いう」「こゑ→こえ」と、例を声に出して読むことで、きまりと音が結びつきます。一覧表を机の前にはっておき、1日1回読むだけでも、1週間ほどで見ないで言えるようになります。
ステップ2:ことば単位で直す練習をする。次に、短い語を現代仮名遣いに直す練習です。まちがえた語の横に、使ったきまりの番号を書かせてください。番号を書くことで、「なんとなく」ではなく「どのきまりを使ったか」を意識できるようになります。
ステップ3:教科書の本文で直す。ことば単位で直せるようになったら、教科書の古文の一節から、傍線の部分を直す練習に進みます。「春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山ぎは」「今は昔、竹取の翁といふものありけり」のように、テストに出る形と同じ練習です。漢字や送りがなの部分はそのまま残し、かなの部分だけを直すことにも注意します。
ステップ4:現代の読み方で音読する。最後は、教科書の本文を現代の読み方で音読します。目で見た文字と、口から出す音のちがいに慣れることが、歴史的仮名遣いをいちばん早く身につける方法です。音読で引っかかった語に印をつけておくと、テスト前の見直しにも使えます。
定期テスト・高校入試での出され方
定期テストでは、教科書で習った本文から、傍線部を直す問題がほとんどです。授業で扱った本文は、テスト前に一度、すべての歴史的仮名遣いに線を引き、現代仮名遣いを書きこんでおくと安心です。高校入試では、初めて読む古文の中の語を直す問題が出ます。ここで6つのきまりが自分のものになっていれば、見たことのない語でも正しく直せます。
また、「すべてひらがなで書きなさい」という指示がある場合は、漢字の部分もひらがなで書く必要があります。指示を読み落として減点されることがよくあるので、問題文の指示に線を引く習慣も一緒に身につけてください。
音読で慣れると古文全体が楽になる
歴史的仮名遣いの練習は、仮名遣いの問題で点を取るためだけのものではありません。現代の読み方ですらすら音読できるようになると、古文の本文そのものが読みやすくなります。中学の古文では、意味を問う問題、主語を問う問題、係り結びの問題など、さまざまな設問がありますが、そのどれもが「本文を読める」ことを前提にしています。仮名遣いで一語ごとに引っかかっていると、文の意味まで頭が回りません。
家庭では、教科書の古文を、まず親がゆっくり音読し、子どもが後について読む「追い読み」がおすすめです。親が古文に自信がなくても大丈夫です。きまりの一覧表を見ながら、「ここは"いう"と読むんだね」と一緒に確かめるだけで十分です。子どもにとっては、大人も表を見ながら確かめている姿を見ることが、「きまりを使えば読める」という安心感につながります。慣れてきたら、子どもが先に読み、親が聞く役に回りましょう。読みまちがえた語は、どのきまりを使えば読めたのかを一緒に確認し、次の音読でもう一度挑戦します。
教科書の古文は、学年が上がると「枕草子」「竹取物語」から「平家物語」「徒然草」「おくのほそ道」へと広がっていきます。どの作品でも、使うきまりは同じ6つです。1年生のうちにきまりを自分のものにしておけば、2年生・3年生の古文の授業にも、余裕をもって臨むことができます。
よくある質問
Q. 助詞の「を」も「お」に直すのですか。
「竹を取る」のような助詞の「を」は、現代仮名遣いでも「を」と書くのがふつうです。直すのは「をかし」「をとこ」のように、言葉の中にある「を」です。学校によって指示が異なることもあるので、授業での説明に合わせてください。
Q. 古文が苦手で、仮名遣いも覚えられません。何から始めればいいですか。
①のハ行のきまりだけに絞って始めてください。出題数がいちばん多く、文字の置きかえだけで解けるので、成功体験を積みやすいきまりです。①が安定したら、②・③の文字の置きかえ、最後に④ののばす音へ進むと、無理なく6つがそろいます。
まとめ:きまりを覚えて、音で慣れる
歴史的仮名遣いは、6つのきまりを覚えて例を音読し、ことば→本文の順に直す練習を重ねれば、短期間で確実に得点できる単元です。古文全体が苦手な子でも、ここから自信をつけることができます。まずは今日、一覧表のきまりを例と一緒に1回音読するところから始めてみましょう。
6つのきまりは歴史的仮名遣いのまとめ表で確認し、ことばを直す→きまりを選ぶ→古文の一節で直すの順に進めてください。本文の音読には古文・漢文プリントも使えます。